CMOS回路の基礎
1、CMOS回路インバータ回路の基本事項
1、CMOSインバータ回路の基礎
これから順に、CMOS回路を勉強していくのですが、まずは、超基本的な回路からはじめたいと思います。ロジック回路でよく使われるインバータ回路です。特徴を簡単にまとめてみましょう。
入力信号に対して出力信号を反転できる。
DC的な入力電流は流れない(過渡的にはゲートチャージ電流が流れる)
静止時の消費電力が小さい(入力が十分H or Lの場合)
切り替わり電圧付近で貫通電流が流れる。
切り替わり電圧付近のゲインは高い(PchとNchの両方飽和領域時)
2、インバータ回路の入出力特性
では早速、インバータ回路の動作を確認してみます。
電子回路シミュレータLTspice入門編
で紹介されているLTspiceを用いて動作確認してみます。このLTspiceを用いれば、自宅のパソコンで簡単に回路の動作を勉強できるので便利です。作者もこのソフトと使っています。
では早速LTspiceを用いて勉強していきましょう。
(a) Sim回路 (b) Sim結果
Fig.1 インバータ回路のシミュレーション
Fig.1から分かりますように、入力Vinに対し出力Voutは反転しています。またM1のドレイン電流を見てみると、切り替わり付近で貫通電流が流れています。これは切り替わり電圧付近でPchMOSとNchMOSが同時にONするためです。以上の理由より、インバータ回路として使う場合の入力電圧は、切り替わり電圧付近の電圧ではなく、十分にHかLの入力をする必要があります。
3、インバータの切り替わり電圧
では次にインバータ回路の切り替わり電圧特性を確認してみましょう。
(a) Sim回路 (b) Sim結果
Fig.2 インバータ回路のシミュレーション
Fig.2から分かりますように、入力Vinに対し出力Voutは反転し、Voutが2.5Vになる電圧はVin=1.943Vです。
この値を実際に計算してみましょう。
ここで用いているMOSのパラメータを以下の値とします。
PchMOS:ksq=8m、Vth=0.734
NchMOS:ksq=14m、Vth=0.679
切り替わり電圧=[KsqnVthn+Ksqp(Vcc-Vthp)]/(Ksqp+Ksqn)となるので、数値を代入すると
切り替わり電圧=[14m×0.679+8m×(5-0.734)]/(8m+14m)
=1.983v
と計算できました。Sim値のとの誤差は約2%です。
以上今回はインバータ動作の基本を確認してみました。更に勉強したい場合は、
集積回路工学 2
などで勉強してください。