CMOS回路の基礎を勉強しよう!!
1、CMOSアナログ回路を勉強する上での基本事項
1、CMOS回路とバイポーラ回路の違い
CMOSアナログ回路を勉強する前に、バイポーラトランジスタと
MOSの違いを簡単に整理しておきましょう。
MOSとバイポーラの違いを簡単にまとめると、
バイポーラトランジスタは、電流制御型素子である。
バイポーラトランジスタは、ベース電流が流れる。
MOSは、電圧制御型素子である。
MOSは、バイポーラトランジスタのようなベース電流は流れない。(ただし、ゲートチャージ電流は流れる)
バイポーラトランジスタと比べるとMOSは、通常gmが低いことが多い。(ただしMOSのサイズやプロセスによる)
MOSは、W/Lのアスペクト比を設計することにより、さまざまなサイズでさまざまな特性を設計できる。
MOSは、バイポーラトランジスタに比べ、ベース蓄積効果がないため、スイッチングは速い。
MOSは、ベース電流が流れず、ゲートにチャージする電流以外は必要ないため、静止時の消費電力は小さい。
これ以外にも違いはたくさんありますが、超基本的事項を挙げてみました。
2、飽和・非飽和の計算式について
MOSで回路の計算や設計を行う場合に必要な式について説明します。
MOSは使用する動作状態で計算式が異なります。そのため、使う領域により、計算式を使い分けましょう。例えば、アンプの増幅やカレントミラーなどリニアな領域で使いたいときは飽和領域です。
詳しくは
アナログCMOS集積回路の設計 基礎編
や
システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術〈上〉
を勉強してみてください。
飽和領域
Vds>Vgs - Vtの場合
- Id=1/2・μCox(W/L)・(Vgs-Vt)・(Vgs-Vt)・(1+λVds)
非飽和領域
Vds<Vgs - Vtの場合
- Id=1/2・μCox(W/L)・[2(Vgs-Vt)Vds-(Vds×Vds)]
ただし、単位面積あたりのゲート容量:Cox=Xsio2・ε0/tox
Xsio2=3.9 ε0=8.86×10-14 クーロン/Vcm
tox=ゲート酸化膜厚
λ=チャネル長変調係数
注意すべきことは、MOS回路関連の書籍では、上記1/2・μCox(W/L)をさまざまな形式で表現しているケースが多いです。1/2・μCox(W/L)と表現しているものもあればkを使っているもの、βを使っているものなど、書籍により表現はいろいろです。でも実際、どの形式を使っても式の意味合いは同じなので、自分の好みや覚えやすさでどれを使うかを考えるとよいのではないでしょうか。ちなみに本ホームページでは、kの√をとったksqを使用していきます。それぞれのパラメータを混同しないように注意しましょう。
3、飽和領域と非飽和領域の境界について
飽和領域と非飽和領域の境目の条件:Vds=Vgs - Vtは非常に重要な式です。なぜかと言うと、この値が増幅器として用いることができるギリギリの電圧になるからです。例えばアンプなど、増幅器で用いる場合、非飽和領域ではgmは極端に下がるので必ず飽和領域で動作させる必要があります。その境界を調べるためにも、この式は非常に重要です。
また、この式はコンパレータやオペアンプ等における入力動作範囲や、出力動作範囲を求める場合、また、各パラメータを設計する時に便利なので覚えておきましょう。(一般的な書籍などではVgs-Vt=Vov:Vovは一般的にオーバードライブ電圧と呼ばれています。)
4、単位ユニットセルとそのパラメータについて
MOS回路を作る場合、ペア性などを考慮すると、単位ユニットセルを決めて、それを基準素子として使うのが便利です。W/Lの値が異なる場合も、単位ユニットセルからパラメータを計算しやすいですし、自分が使う基本ユニットセルのkやβなども算出しておけば、計算するときや設計する場合非常に楽です。逆に、自分が使うプロセスの単位ユニットセルにおけるk、β、Vth、λなどが分からなければ計算できません。以上の理由よりきちんとそれらの値は算出しておきましょう。
5、MOS回路を扱う上での基本特性の式
バイポーラ回路と同じようにMOS回路を扱う上でも重要な式はいろいろ存在します。実際に特性を数式化できると便利です。それらのほとんどはIdの式から算出されます。いくつかの例を挙げてみましょう。
gmの式
トランスコンダクタンスgmの定義は次の様になります。
ゲート・ソース間電圧の変化に対するドレイン電流の変化
gm=ΔId/ΔVgs=μCox(W/L)・(Vgs-Vt)
出力インピーダンスの式
出力インピーダンスの式はバイポーラトランジスタのro=(VA+Vce)/Icと同じように、
ro=1/λIdで表現されます。
ただし、λはチャネル長変調係数です。
ソースフォロア回路やゲート接地回路などで使う基板バイアス効果の式やその他の式もまだまだたくさんありますが、本ページは基礎的な事柄にとどめておきたいので、勉強したい方は、
アナログCMOS集積回路の設計 基礎編
などが分かりやすいです。